下北かどっかのカフェ。略して「どっかのカフェ」。

 

それはとてもとても、小さな小さなお店で、

 

世田谷区のどこかにじつざいするカフェ。

 

でも、小さなそのお店はふつうの人には見えなくて。

 

 

もくじ

 

+ 「望む風景」10.30 up

+ 「ピーターパンち」11.11 up

+ 「銀河鉄道」12.1 up

+ 「めのまえ」12.12 up

+ 「道なりに広がってゆく」12.31 up

+ 「新代田という場所に行ってみたよ」1.7 up

+ 「路面電車に乗って」1.19 new!




それは何の看板もない一見怪しげなカフェであって、

 

それはそれは白い外観の可愛らしいカフェであって。

 

 






カフェはお一人様、お二人様専用

 

三名様、四名様はお断りのとても無理な窮屈なカフェ。

撮影:ま〜ぼ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

           下北かどっかのカフェ本 ②

 

                 監修
        下北かどっかのアート集団「アゴニーコラム」



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 望む風景  」

 

 

 

 

 

 

 

 

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             写真: saito mayumin

              文: あくつ ともひろ

 


 

 

下北のどっかのアパートから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この窓から見る景色は
いつだって同じ。変わらない。
変わらないというのは平凡でもあるが、わたしはこの平凡な景色がすき。

 


 

 

新代田空港

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ゴー"と唸る空。窓から空を見上げると、大きな飛行機。

飛行機に乗ってニューヨークからニューオリンズまで。
椅子に座っているだけで移動できてしまうことに不思議を感じている。

わたしが選ぶのは、目的地と席のランクだけでいいんだから。

 


 

 

No SHIMOKITAZAWA , No cost

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空に突如映し出された文字。さきほどの飛行機が残していったメッセージ。
"NO COST"
これで更に"Quotation"が加わったら
大変だろうなと思いながら空を見上げていた。
ダブルコーテーションとかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:清宮 真奈美(URBANフェチ)  撮影:saito mayumin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 ピーターパンち  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: ノミヤ ユウキ

 


 

 

シュールな夢から降ってきた、とんでもなくファンタジーな妄想。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッキングピンクのフラミンゴが、散らかる部屋で首を傾げた。

そういうわけで、終わらない街を探してきます。

 


 

 

同じ道を歩いていても、

 

別々の場所へ進んでいるなんてあたりまえだ。

 

 

 

 

ラジオの中ではさっきからカブトムシが歌っている。

 

 

(スタンドバイミー、)

 

ぼくはあいつを忘れないし、あいつはぼくを忘れない。

だからわざわざ思い出すこともない。

 


 

 

 

 

たぶん目的地は決まっていて、

カーナビでは永遠にたどり着けないこともわかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

つまるところぼくらは迷子にならなきゃいけない。

 

 

 


 

そうして音楽はとまった。

この街には今もまだピーターパンが住んでいる。

 

 

「ひさしぶり、」

 

 

と、ぼくは言う。

 

 

 

 

 

もう遅いけれど、今夜はどっかのカフェでコーヒーを飲んで帰ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:megumi  撮影:ま〜ぼ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 銀河鉄道  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: ノミヤ ユウキ

 


 

 

父さんのコートからこぼれたセピアのそれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れてた、たぶん忘れられない、忘れもの。

見知らぬ彼は、僕に似ていた。
見知らぬ彼女は、綺麗だった。

 


 

 

「あの星はね、もうあそこには居ないんだよ」

 

顔も名前も忘れたけれど、
斜め前の席のそいつは、星と本がすきだった。

 

 

 

 

「あれは100万年前、あの星が爆発したときの、最期の光なんだ」

 

 

冬の足音の中にまじって、少し神経質な声が聞こえた。

 

 

その声は、僕と似ている。

 


 

 

 

 

最終電車で街に出た。
少し肌寒い。

 

 

いつだったか、誰かと見つけた一番星が、この街のどこかにまだ眠っているかもしれない。

 

 

 

看取り損ねた思い出が、
ブラックコーヒーに浮かんでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:安本 美緒  撮影:ま〜ぼ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 めのまえ  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: あくつ ともひろ

 


 

歩行者用信号機



 

 

目の前のことがすぐ変わらないから押さないって?
転機はそうやすやすとは巡ってこないよ。

深呼吸して、この先が変わっていくのを焦らずに待ってみようよ。
そして、怖がらずに進んでごらんよ。きっと大丈夫だから。


みんなが立ち止まって僕の鼻を押すんだ。 これから、先のことを想像していくんだ。 近い未来を自分が想像していくんだ。
想像が創造の始まりで、創造は想像で作り出すんだ。夢への第一歩なんだ。
みんな、それを知らないんだ。 僕はこの場所で、それを伝えるべくずっと待ってるんだよ。 君が、夢を追いかけているあなたがやってくるのを 僕はここで待ってるんだよ。 呼ばずとも、看板を出さずとも、 いずれあなたが引き寄せられてやってくることを、 僕は知ってるんだ。それは、僕のこの先の人生においてあなたが必要な存在だからだと僕が知っているからなんだ。


 

 

 

「赤。Red. 躍動感、元気を与えるカラー」

 

誰も映っていないアパートメント。
想像してみる。イメージング。
人も写っていないアパートだけれども、夕方から夜にかけ
すべての窓からほんのりと灯りが漏れる。
すごいピースフル。外に人は写っていない。
一見静かな風景だけれども、部屋の中には人のそれぞれの生活があって、
そこは外からは見ることのできないピースフルな空間。
外は誰もいない。中はピースフル。
もう一度、外は誰もいない。中はピースフル。中はピースフル。
Again, again, again and again.

シンキングアートのおはなし。


 

野宿をするものたち

 

 

 

わたしはロンドンでよく野宿をする。
地下鉄で友人とばったり会う日も珍しくもなく、
「これからどこへ行くの」と聞かれれば、
「野宿してきた帰りだよ」と答える。

ある朝方、寝どころを探しにトラファルガー付近に辿り着くと、
向こうからまた別の友人が向かって来て、
偶然のことに驚きながらも互いに情報交換をする。
彼女は電車の中で朝を迎える達人だ。

 

 

そして夜が明け、まだ付近に誰もいない、まるで地球上にこの男女2人しか存在しない空間のなか、 ふたりは砂漠のように埃が舞う地上で、廃墟となったビルを見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:はぎれ作家いおこのこ  撮影:mayumin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             「 道なりに拡がってゆく  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: 佐々木しま子

 


 

 

彼女は窓辺に座り遠くを眺めている。

 

 

 

 

ぼんやりと思うのはこの世のことではなく、今日の夕食のこと、明日の天気のこと。

 

 

稀に眼をやっても思うのは君たちの事でなくて

 

自身の快楽なんだごめんね。

 

 

 

 

 

その猫は独りごちひとつ鳴いた。


 

 

 

夜中飛び出したのは熱があったせいです。

 

 

手袋も持たず町へ出る。

 

おぼつかない足取りで道の真ん中へ倒れこんだのを

 

道行く人などないため誰も咎めたりはしない。

 

 

私は恍惚としてきみに話しかける。

 

 

「やあ僕は気分がよいのだ!」

 

 

路傍の自転車が笑っている。


 

あのこへ

 

読んだらすぐに破いて捨ててしまって下さい。

 

きっとあなたはりぼん掛けて、綺麗な箱に仕舞うのでしょう。

 

それでもきっと破いて捨てて。

 

ひとつ言えなかったこと。あのこが大切だったという事。

 

そしてあのこは綺麗だという事。

 

これは私の密やかな胸の内なのです。あのこへ言えない秘密なのです。

 

おかしいでしょう、自分へ宛てる手紙なんて。

 

誰にも知られず終わる思いです。どうか破いて捨てたなら、あのこへ言うのよ、

 

すぐに言うのよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:ヤマモトカオリ  撮影:mayumin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          「 新代田という場所に行ってみたよ  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: あくつともひろ

 


 

 

新代田の海辺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きみは
旅路の支度をしてその荷物を背負っているのかい?
平和になったらさ、手ぶらで旅にでるのも、いいもんかもね。


 

 

新代田駅前にて、NAVY色のキャップを被ったジョージに話しかけられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Oi !
あくちー! よう!あくちーじゃないか!
見てみろよあれ。信号が赤なんだ! 「止まれ」ってよ。でも青信号が矢印を出して「行っていい」って言ってるんだぜ?
クレイジーだろ?
なぜって、
青の矢印が「行っていい」って言っても、信号は赤なんだ。「止まれ」ってよ。


 

 

SUSHI BARでの会話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとあんた〜!一度取ったお皿を戻さないでよ!」
「えー、だって。じゃこれお姉ちゃんにあげる。WASABI抜きはワビ抜き?それともサビ抜き?」
「WASABI抜きよ」
「あくちーは何を企んでるの?」
「知らないわよ!彼は秘密主義すぎなのよ!謎もいいところよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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撮影:ま〜ぼ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          「 路面電車に乗って  」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

             写真: saito mayumin

              文: 佐々木しま子

 

 


 

現像液が部屋には揃っている。

黒いカーテンや赤いランプも揃っている。

撮り終えた写真が天井にぶらさがっている。植物の写真ばかりがある。

ポートレイトは数える程しかなく、それは横顔ばかりだった。
彼の手は現像液の匂いに染みていた。

それを気にして彼女の頬に触れないでいる。

 

彼女は彼の指を待っていた。いつも待っていた。

 

彼は代わりに彼女の頬を写す。彼女はそれを悲しく思っている。
シャッター音を聞くたび、悲しく思っている。

彼は彼女の悲しい横顔を知っていた。しかしそれを彼は愛していたのである。
彼の指は写真機の為にあった。

 

「知ってしまったのです、やっと出会えたのです、私の胸の内には、中心には、あなたではなく、僕自身でもなく、それがあったのだ」


元日。

 

朝、野菜を買いに散歩に出る。

人まばら。

空気が澄んでおり気持ち良い。
家々は静まりかえっている。皆おそらく眠っている。

 

私の家も静まりかえっている。
小鳥が私の帰りを待ってる。

 

このところ考えていたのは、私はひとりでも生きてゆけるということ。

家族を日々忘れていくこと。それを悲しいと思わぬこと。

 

故郷は雪が降っているだろうか。

 

私の帰りを待っているだろうか。

 

きっと家は皆揃うのを待っている。きっと待ってる。

 


マンホールの下に飛び込む夢をみる。
穴の中がどうなっているのか私にはわからない。
夢は飛び込めば終わってしまう。

 

図書館へ行く最中だった。マンホールの蓋が開いている。

 

私はああ、と声を漏らす。

夢か、と少し思う。

思い出したのは中がどうなっているか、私は夢で見ていた。

 

男が顔を出す。マンホールから這い出すと私の方へ歩み寄る。

 

探したよ、と握手を求められ、
私は無表情のままそれに応ずる。

 

マンホールの中にはヘルメットをかぶった男がいた。ずいぶん汚れている。

 

仕事だったの、と私が問うと、バイトです、と穴の中から返事があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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モデル:須藤由希  撮影:井上あゆみ